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2018.08.02
今回のシリコンバレー訪問のハイライトとなったのが、人工知能(AI)用の半導体メーカーのNVIDIA(エヌビディア)です。NVIDIAの半導体は通常のCPUと異なるGPUというもので、もともとはゲームやパソコンの画像処理のためのものでしたが、同時に複数の計算をこなす並列演算で処理速度が非常に速いことから人工知能のディープラーニングに使われるようになり、3年間で時価総額10倍という爆発的な成長を遂げている会社です。自社製品の「目的外使用」が大成功した例ですが、ITオタクにはカリスマ的な会社と言えます。
実際にグラフィックを見ながら、人工知能のスゴさを体感しました。コンピュータに膨大な量の花の写真を勉強させ、7,000種類もの花を判別することが可能になったというデモンストレーションでは、1秒間に5枚の写真を見て瞬時に判断するのを見て、コンピュータの認識能力は人間を超えるということが実感として分かりました。自動運転の深層学習では、バーチャル・リアリティの映像を使って膨大な量の車の周辺環境を学ばせることで、運転操作を自動的に判断することが可能になります。同じ道路の映像でも、朝昼夜、晴れと雨、木々の茂り具合などグラフィック効果で様々に変化させるデモは圧巻でした。「下手な人間のドライバーよりもAIの方がはるかに正確な判断をする」という話も、以前は「ホントかね?」と思っていましたが、だんだんそんな気がしてきます。
AI用半導体のデファクト・スタンダードはまだ決まっておらず、インテルやクアルコム、グーグル、そして日本企業が熾烈な戦いを繰り広げています。最大の関心事は、開発が進むクルマの自動運転の技術の主導権をどこが握るかです。昨年、トヨタ自動車がNVIDIAと提携を発表しましたが、あくまで技術候補の一つとも言われています。半導体のようなハードウェアの競争の先には、さらに自動車に搭載するソフトウェアの開発競争が待っています。日本勢も、これに遅れることなく頑張ってほしいと願っています。
その後、私も日頃利用しているFacebookの本社にお邪魔しました。夏休みの今の時期はなんと2,000人ものインターンを3ヶ月受け入れているそうです。まるでディズニーランドのようなおとぎの国のオープンカフェで、社員の方々がPCを開いて仕事をしている様子は何とも不思議でした。『問題をクリエイティブに解決せよ』『人がやっていないプロジェクトをやれ』というのが社訓だそうです。3Dバーチャル・リアリティも体験させていただきました。
先月末にはFB株の時価総額は、一日で米国の歴史上最大の下げ幅を記録しました。アメリカ大統領選にまつわる個人情報流出や、広告主や提携する携帯端末メーカーへの個人情報閲覧許可の疑惑など、様々な問題も抱えています。今年の5月にはEUが一般データ保護規則(GDPR)を施行し、違反企業には巨額の罰金が科されるようになりました。これまで圧倒的な優位を誇ってきたITプラットフォーム企業も、今後の戦略は非常に難しく、岐路にさしかかっています。
夕方にスタンフォード大学ビジネススクールのキャンパスを訪れました。ビジネススクールの日本人学生の方々がお迎えくださり、キャンパスを歩いて案内してくださいました。私が卒業したコロンビア大学とは環境が全く違い、敷地がとにかく広く、歩き終えて携帯の万歩計を見たら7kmも歩いたことが分かってビックリ、普段の運動不足を痛感しました。
スタンフォード大学は、大学自体で何兆円もの資金を運用しています。研究開発ではこの資金力には日本は到底かないません。学際的な教育も進んでおり、近年の新しい学問領域である「デザイン思考」についても専門に扱うDesign Schoolが存在し、学部をまたいで多くの学生が学んでいるそうです。
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シリコンバレー報告③ Lyftとライドシェア