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2020.01.07

年頭所感『日本衣料管理協会に期待する』

ファッション業界で働くみなさま、特にMade in Japanの品質管理に携わる方々にお送りした年頭所感です。2020年が日本のファッション業界にとって飛躍の年になりますように。

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東日本大震災から八年半。当時、私はフランスの服飾ブランドの日本支社に勤めており、震災の翌朝は同僚と食料を探して銀座の街を歩き回りました。ファッションは生活必需品ではないので、景気が悪くなると最初に打撃を受けます。やっとリーマン危機から回復の兆しが見えてきたのに。今度はもっと深刻でした。こんな時に、私達の仕事はどうしたら世の中の役に立てるのだろう。絶望的な気持ちだった私達を救ってくれたのは、『ファンタジーがなければ生きていけない』、という言葉でした。人間は衣食住が足りるだけではなく、希望があればこそ生きていける。私が勤めていた服飾ブランドの中興の祖である経営者が遺したその言葉は、震災後の不安のなかで、自信をもって私達の仕事をしよう、という心の支えになりました。厳しい冬の時代にファッション産業に関わらせていただいたことは、今でも私の貴重な財産です。

通商産業省、経営コンサルティングを経てファッション業界に転じた時、私は大きな衝撃を受けました。製造業の多くは、頑張れば頑張るほど価格が下がって利幅が薄くなります。ところがフランスのファッション・ブランドは、あくせくせずにゆったり働いているのに高収益を上げているのです。日本は発想の転換をしないといけない、自分の首を絞めるようなやり方ではなく、ブランド価値を高めて高収益を目指すやり方に変えないと、世界の競争の中で日本はジリ貧になってしまう、という強烈な危機感を持ちました。日本製の生地や糸が欧州ブランドに素材として使われているというのは誇らしい反面、残念でもあります。高いクオリティを持つメイド・イン・ジャパンのファッションを、日本のブランドとして世界に発信したい、というのが私の願いです。

私は現在、自民党の繊維・ファッション議員連盟で事務局次長を務めています。日本の繊維・ファッション産業のさらなる発展のためには、生産、流通、販売、人材育成など課題は多岐にわたります。その中でも中心的な存在なのが、日本の高い品質を支える衣料管理士(TA)、繊維製品品質管理士(TES)の皆様です。日本の消費者は品質に対して非常に要求水準が高いのが特徴であり、日本の消費者に認められた品質ならば、必ず世界で堂々と勝負できます。TES、TAの皆様の品質への厳しい眼でジャパン・ブランドを育てていただき、将来必ず世界に誇る日本発スーパーブランドが誕生することを心から願っております。

(日本衣料管理協会会報2020年1月1日号から抜粋)