Blog
2025.11.13
毎年恒例となっているシンポジウム『納税で持続可能な日本』に出席しました。主催者である麹町納税貯蓄組合連合会の浅見哲会長の進行のもと、早稲田大学教授の伏見俊行さん、SDGs市民社会ネットワーク理事の星野智子さんと共に、今年もパネリストを務めました。


今年のお題は「ふるさと納税と関税の力」。都市部の自治体で深刻な税収減を招いているふるさと納税と、日本をはじめ諸外国で対応に苦慮しているトランプ減税は、税収の奪い合いという観点からみると共通しているのではないか?という問題意識です。
ふるさと納税については、千代田区や新宿区を含め都市部の自治体も、独自の返礼品を準備して住民税の流出に歯止めをかける取組が始まっています。問題なのは、ふるさと納税の納税者の多くは、本来の制度趣旨である税収の地方への移転のためではなく、通販のような感覚である点です。個々人の消費行動に委ねられるため、どれだけの金額が移転するのか国や自治体がコントロールすることもできません。税制の専門家の間では、そもそも応益原則でなければならない住民税を変質させてしまったことに異論も多いと聞きます。本来の制度趣旨に立ち返って、返礼品を求めないふるさと納税ならば良いのでは?さらには、地方の支援を目的としたクラウドファンディングにした方が、制度としてすっきりするのではないか?と議論が進みました。
一方、トランプ関税は米国の貿易赤字削減と製造業の国内回帰を狙ったものですが、結局は価格に転嫁され米国内の消費者が負担を負わせることになります。米国のGDPのうち第三次産業(金融、医療、ITなどサービス業)が占める割合が78%もあること、米国企業であるGAFAが米国以外の国々から利益を受けていることを考えると、そもそも米国の収支は本当に赤字なのか?疑問です。モノの貿易に限定して敢えて古典的な「関税」のみに着目している点は、GAFAなどのデジタル課税の議論と切り離して米国の立場を守るためとも受け取れます。タックスヘイブン税制と極めて良く似た問題ですが、国家間での課税のあり方について、本来の利益を得ているところで課税できるようなルールを整備していく必要があります。『アメリカ・ファースト』のトランプ大統領の再任で、国連やWTO、COPなど多国間の枠組みが弱まったようにも感じられますが、日本はぶれずに「力ではなくルールを」主張すべきだと考えます。
時代の変化と共に社会のしくみや国際情勢も変わっていくなかで、「税の公平性」を保つには政策形成においても不断の努力が必要です。何が公平か?どうすれば公平を実現できるか?政治に関わる上で、専門家はもちろん国民一人ひとりのご意見を伺いながら、税制をアップデートしていく必要があります。ふるさと納税においては東京が、トランプ関税においては日本が不利益を被る立場にありますが、私自身は今の国会や与党の議論に地元の声を届けることができないことをもどかしく感じています。

