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2025.02.07

インド出張③ 日印知的コンクラーベ『絆〜Kizuna〜』に出席

今回の出張のメインイベントであるシンポジウム「日印知的コンクラーベ『絆〜Kizuna〜』」は、在インド日本大使館とインド外務省、笹川平和財団が共催し、地元のメガラヤ州とアッサム州の協力で開催されました。インド北東部とバングラデシュにまたがる地域の社会経済開発に関わる日・印・バングラ3ヵ国の政府機関、民間企業、大学、シンクタンクなど約80名が参加。私はインドの前・元下院議員や州の閣僚と共に政治セッションに登壇しました。

 

 

 

1.バリューチェーンと物流システムの連結性向上

インド北東部は、ミャンマーやバングラデシュなどから東南アジア諸国に繋がる地域ですが、長くインド経済の発展から取り残されてきました。現在はモディ政権のアクト・イースト政策の下で中央政府も重点的な支援を行っていますが、その要となるのは周辺地域との接続性の向上です。道路や物流ハブなど物理的なインフラ整備はもちろん、通関や検疫の手続簡素化やDX化、基準認証などのソフト面でのインフラ整備も急務です。
南アジア諸国の間では、二国間で貿易円滑化などの取決めを行う場合がありますが、より広域的な多国間の地域協力として、南アジアサブリージョン経済協定(SASEC)やベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)などがあります。しかし、各国とも様々な国内事情を抱え連携強化の機運が高まらないのが実情です。
インド北東部の経済発展のためには、輸入主導型から輸出主導型の産業に移行し、海外からの直接投資を引きつける必要があり、ASEANをモデルとした地域連携の強化が望まれます。

 

2.インド北東部から日本への技能実習生の派遣

日本からインドに進出している企業1,400社のうち8割が利益を出していますが、日本企業のインドに対する関心の高さには、大企業と中小企業で大きなギャップがあります。北東部のアッサム州には18社が進出していますが、若者の失業率が高いこの地域でいま最も期待が高まっているのが技能実習や特定技能などによる日本への人材供給です。人数的にはまだまだこれからですが、ベトナムのような仲介業者がいない健全な仕組みであり、顔立ちや人柄が日本人に近いとのこと。
日本で初めてのインド人技能実習生送り出し機関であるARMS社や、インド国内に複数の拠点をもつNAVIS HR社など、現地で日本語と基本的なスキルを教え、介護や製造業、農業などの分野で北東部から数百人の実習生を日本に送り出しています。

 

3.半導体・ハイテク産業と日本企業の進出可能性

インド北東部の経済を飛躍的に進化させると期待されているのが、タタ・グループによる半導体工場の建設です。シンポジウムに先立って建設予定地を視察しましたが、州政府と一体となって電気や水道のインフラ整備から始まる大規模開発を行い、最終的には教育やレクリエーション施設、高級ホテルやゴルフコースまで備えた巨大なエレクトロニクスシティを目指しているとのこと。
半導体産業には、物流はもちろん梱包やマスキングなど各工程に様々な企業が関与する必要がありますが、インドの日本商工会も関心のある企業150社を集めた半導体委員会を立ち上げ、東京エレクトロンなどは既にタタ社と提携し具体的な計画を進めています。
かつてスズキ自動車がインドに進出してシェア5割を誇るまでに成長し、インドの産業全体を形作ったのと同じように、タタよる半導体産業がインドの産業構造を大きく変えていくと言われています。日本をはじめ海外からも投資を募るためには、特区による税制優遇も必要との要望も聞かれました。

 

 

 

 

 

4.インド工学系人材と日本の産業界との連携

インドに優秀なIT人材が豊富である背景には、全国23ヵ所にある工科大学(IIT: Indian Institutes of Technology)の存在があります。グワハティにもIITが置かれており、多様な地域性を反映して7つの言語をカバーしているそうです。
ハイデラバードのIITで教鞭を取る日本人の教授によると、インド人学生は問題を解くのは得意だが、何が問題かを見つけるのは苦手だとのこと。単なる学問ではなく、なぜ学ぶのかという動機付けや、「儲かる仕事が良い仕事」ではないという価値観、ガンジーや稲盛和夫氏のような哲学を教えるのに力を入れているとのことでした。日本とインドの大学教育のシナジーを出すために協力が必要ですが、その際には最初から産業界を巻き込むべき、とのお話もありました。
IT人材に限った話ではないですが、インドから日本への留学生は1,700人程度にすぎません。ネックとなっているのが英語と食べ物です。人材不足で停滞する日本経済を押し上げるためには、私たち自身が変化を受け入れる必要があるのかもしれません。

 

5.持続可能なエコシステム構築のための人と技術の架け橋

日本とインドの政治家達によるセッションでは、インド北東部地域の持続可能なエコシステムと、人と技術の架け橋について議論しました。私も登壇し、経産省での経験から貿易自由化の必要性と、環境副大臣を務めた立場から環境と経済の両立についてプレゼンテーションしました。

 

 

 

この地域の重要資源は豊富な竹の存在です。セミナーに先立って、竹のプランテーションを視察しましたが、インド国営の石油精製会社がバイオエタノールを作るために各地の集落と竹の供給契約を結んでいるとのこと。

 

 

 

 

また、岐阜大学とグワハティ工科大学で共同研究や、2つの大学の学位を取得できるプログラムなど連携が進んでおり、会場にはグワハティ工科大学に滞在中の岐阜大学の学生さんも駆けつけてくれました。まさに人と技術の絆が生まれつつあることを感じました。

 

そもそも、日本がインド北東部と接点を持つようになったのは、モディ首相から安倍元首相に北東部への支援の要請があったのがきっかけと言われています。2019年12月、安倍元首相はグワハティを訪問し、モディ首相と首脳会談を行う予定でした。しかし治安の悪化により実現せず、その後、安倍元首相はついにインド北東部を訪問することなく、この世を去られました。今回、私がグワハティの地に立つことができたことを、「何か運命のように感じる」とプレゼンの中で申し上げました。

 

セミナーの終了後、シロン選出の前下院議員の方が私にこうおっしゃいました。「安倍首相がインド北東部を訪れてくれていたら、この地域は今よりずっと発展していただろうに」。旧安倍派所属議員だった一人として、私達の今の境遇を思うと胸が痛くなるような言葉でした。これから先、私が政治の仕事をしていく上で、今回の出張がきっと何かの因果の糸になると確信した瞬間でした。