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2024.03.13
ドイツのバイエルンを中心とする国際環境NGO、FoEドイツ/BUND(ドイツ環境自然保護連盟)の方々と会談の機会をいただきました。
ドイツ政府は以前から積極的にエネルギーシフトを進めており、電源構成における再生可能エネルギー比率は4割近く、主要国の中で非常に高い水準です。2023年4月に原発を完全停止しましたが、将来は2030年までに石炭火力から脱却し、2035年までに風力を中心とした再生可能エネルギーのみによる電力供給を目指すとしています。
石炭発電を削減したことでロシアへの燃料依存を下げることができたこと、隣国のフランスから原子力発電の電力を輸入しているといわれるがドイツからも再エネ電力を輸出していること、再エネ電力は高いといわれるがウクライナ戦争後はむしろガス価格が価格決定要因となっていること、など説明がありました。
私からは、日本のエネルギー政策と再生可能エネルギーの展望についてお話ししました。
日本のエネルギー政策がドイツと異なるのは、地理的な要因が影響しています。日本は国土が狭く、太陽光発電や風力発電を拡大するには非常に不利な環境にあります。
昨年、ドバイで開催されたCOP28では、2030年までに再エネ発電容量を世界全体で3倍にするというイニシアティブに130ヵ国が賛同しました。日本も賛同しましたが、実際には再エネ比率は現状の21%から2030年に38%まで増える見通しにとどまり、3倍増には及ばない状況です。
日本が温室効果ガス排出ゼロを目指す上で、ゼロエミッション電源である原子力発電を放棄するのは現実的ではありません。我が国のエネルギー基本計画では『原子力については安全性を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する』としています。原子力の安全など将来に向けた技術の進歩のためにも、原子力政策に真摯に取り組む必要があります。
一方で、日本でも再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取組が進んでいます。その中でも特に日本が活路を見出そうとしているのが、次世代太陽電池であるペロブスカイトと、洋上風力です。
ペロブスカイトはフィルムのように薄い太陽電池で、曲面にソーラーパネルとして設置することができます。政府は2025年に実用化を目指すとしていますが、今後、海外との開発競争の激化も予想されます。
洋上風力は、日本周辺の海域は急に水深が深くなるため、浮体式が主流となります。現在、浮体式洋上風力の設置場所を排他的経済水域(EEZ)に拡大するための法整備が行われ、国産の発電設備の供給に向けた企業連合も計画されています。
再生可能エネルギー拡大の障壁のひとつに、地元住民との合意形成があります。
太陽光パネルの乱立や放置などへの対策として、設置手続の厳格化や廃棄費用の積み立て、周辺地域への事前周知などを定めた法改正がなされました。自治体における脱炭素の取組では、地域の発展に資する取組を計画の中に位置づけるよう求められています。ドイツにおいても、再エネ発電の立地地域には電力料金を軽減するなどの対応が進んでいるようです。
国によってエネルギー政策が異なるのは当然ですが、自国で得られた技術や経験を他国と共有することはお互いの利益となります。日独の違いを前提に、友好的、建設的でオープンな有意義な対話となりました。