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2023.06.24

学習院大学国際政治研究会で講演

学習院大学国際政治研究会主催の講演会で、『次世代に向けた環境政策』と題して講演をさせていただきました。内容は、環境問題の3本柱である①気候変動、②生物多様性、③循環経済に加え、先月開催されたG7広島サミットにおける気候・環境分野の成果について。

 

 

 

質疑応答では、以下のご質問をいただきました。

 

■自動車の脱炭素

自動車の電動化によるCO2削減は大きな課題だが、電気自動車(EV)に搭載するリチウムイオン電池の製造におけるCO2排出量は非常に大きいため、ライフサイクル全体でみると脱炭素とは言えない。政府はトヨタ自動車のEV向け電池増産に1,200億円の補助金を支給するとのニュースがあったが、政府の政策はどのようなものか?

→ ご指摘のとおり、EV化だけでなくライフサイクル全体で脱炭素を図る必要があります。EV化も重要ですが、日本の強みであるエンジン車を使い続けるために合成燃料の開発なども進められており、各国それぞれのエネルギー状況を考慮して「多様な選択肢」を進めていく必要があります。

 

■生物多様性の保全

国立公園が観光客を迎えているのに対して、都会の公園には立入禁止の場所もあり、もっと子ども達が遊べる環境にした方がよいのではないか?

→ 自然環境保全の取組において、欧州と日本には考え方の違いがあります。欧州は人間の手が入っていない原生林を大切にするのに対して、日本は昔から里山(人間の影響を受けた生態系が存在する山)など自然と人間が共存してきました。2030年までに陸と海の30%を保全する30by30目標に関しては、都市の緑地をどのような条件でどこまで含めるかは、これから国際的なルールの議論となるところですが、保護と利用のバランスをとることが重要だと考えています。

 

■持続可能な航空燃料(SAF)

次世代の航空燃料であるSAFについて、日本は欧米から遅れをとっていると言われているが、政府の方針は?

→ SAFに限らず日本が欧米に後れをとることが多いのは、国際ルールが欧米主導で決まってしまうからです。日本政府はもっと国際的なルール交渉で主導的な立場を取れるようになる必要があります。SAFについては、EUは欧州の航空会社に対して使用目標を義務付けし、米国政府もSAFに対する補助金や税額控除を始めています。日本もSAFの導入促進に向けた官民協議会が立ち上がっています。一方で、着実なCO2削減のために、SAFの本格導入が始まるまでの間は低燃費機材への入れ替えを進めていく必要があり、これに対しても業界から政府に対し支援を求められています。

 

■CO2の固定化技術

カーボンニュートラルを目指すと言っても、火力発電を使用する限り、CO2の排出を抑えることはできないのではないか?

→ 日本や石油・石炭・LNGなどの化石燃料への依存が非常に高く、火力発電を直ちにゼロにするというのは現実的ではありません。このため、化石燃料の使用によって排出されたCO2を回収・貯留するCCS (Carbon dioxide Capture and Storage)や、分離・貯留したCO2を利用するCCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage) といった技術の開発が進んでいます。

 

■サステナブルファッション

ラグジュアリーブランドだけでなくカジュアルブランドでも衣類の再利用が進んでいるのではないか?3D編機などの導入は雇用を奪うのではないか?

→ ファストファッションの中にも古くなった衣服の回収ボックスを店舗に置いている所もあり、アパレル企業にもバーゲン会場で古い衣服を回収する所もあります。衣類のリサイクルでは回収の仕組みづくりが不可欠であり、企業や自治体などでの試行的な取組を広げていくことが必要です。一方、日本国内のアパレル製造業の人手不足は深刻であり、これまでアジアなど海外での生産が多かった日本のアパレルにとって国内回帰は重要な課題です。

 

 

 

講義を終えてみて、つくづく、長時間の講義をメリハリをつけてお話しする難しさを感じましたが、学生さん達は皆、メモを取りながら熱心に耳を傾けてくださいました。また、私が学生だった頃は、政治系サークルというと女子学生がほとんどいなかったのを思い出しますが、今日の出席者には女子学生も数多くいらっしゃったのが心強く感じました。

 

今日お話をきいてくださった学生さん達が私の歳になる30年後は、ちょうど2050年頃です。いま私が政府で取り組んでいる仕事が30年後にどのような成果をもたらしているか?思いを馳せる講演会となりました。