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2022.11.14

シンポジウム『納税で持続可能な日本に』に出席

麹町納税貯蓄組合連合会が主催するシンポジウム『納税で持続可能な日本』にパネリストとして出席しました。浅見哲会長の司会進行のもと、早稲田大学の伏見俊行先生、SDGs市民社会ネットワークの星野智子理事、NPO持続可能な開発のための教育推進会議の鈴木克徳共同代表理事と共に、「コロナ後の納税の意義と自覚」というテーマでディスカッションをしました。

 

 

ロシアによるウクライナ侵攻後、世界の安全保障環境が大きく変わりましたが、戦争と税とは実は深い関係があります。伏見先生から「歴史的に戦争は新税がつくられるきっかけとなってきた」というお話がありました。周辺諸国との関係が緊迫してきた1887年に所得税が導入され、日露戦争下の1905年には相続税が創設、太平洋戦争を迎える1940年には、それまで所得税の一部だった法人税が独立して設けられました。戦後は一転して、それまで戦費調達のために発行されてきた国債が紙屑になり、1947年に制定された財政法4条で、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」との原則が定められました。

 

一方で、SDGsに詳しい星野理事によれば、SDGsが示す17の価値観の中には、反戦や核軍縮といった内容は含まれていないとのこと。これは、国連総会でSDGsを採決する際に、核を保有する安全保障理事会の常任理事国に配慮せざるを得なかったのではないか、というお話がありました。
また、持続可能な開発のための教育(ESD)の第一人者である鈴木先生からは、租税教育の重要性という観点から、税は国政に関与する権利であり、国に付託するものである、という視点をいただきました。

 

私からは、日本の防衛費と財政規律をめぐる議論について説明させていただきました。
今年5月の衆議院財務金融委員会で、私は、鈴木財務大臣に対する質問で、「防衛費は人の命を守る予算でありシーリングの枠外にすべきではないか?」、「次期中期防の対象期間である2023~2027年は、財政黒字化目標を達成する年限の2025年と重なるが、防衛費の拡充は財政健全化目標の枠内でしか行えないのか?」と問うたところ、『安全保障の観点から、経済、金融、財政の脆弱性を高めるようなマクロ経済運営はすべきでない』との答弁をいただきました。言い換えれば、安定した経済・金融・財政も安全保障の一部である、ということだと理解しています。

 

米国の国防予算は、①研究開発、②疾病対策(バイオテロ対策を含む)、③宇宙関連の3つに大別されますが、国家安全保障(National Security)は、平時は防災、有事は防衛と捉えられ、平時の公共事業予算は、有事には武器・弾薬の予算に組み替えられる、という話を聞いたことがあります。
今年の年末に向けて、日本の政府においても防衛費のあり方について議論が進んでいますが、こうした米国の考え方も取り入れて、新たに『総合防衛費』という概念を創設することが検討されています。従来の「防衛費」の概念に加えるものとして、①公共インフラ、②科学技術研究、③サイバーセキュリティ、④同志国との国際協力、を挙げ、令和6年度予算要求から各省庁に予算要求の段階で「特別枠」を認める方向で検討が進んでいると伺っています。従来の費目から看板を掛け替えるだけでなく、真に有用な予算編成が行われることが期待されます。最大の課題は、その財源をいかに調達するかです。

 

財政再建派と積極財政派の論戦は、突き詰めると「国債を際限なく発行することで財政が破綻するか否か」という点かと思います。国債をいくら発行しても財政は破綻しないとするならば、財源確保のために徴税する必要はなくなりますが、こうした仮定の議論はナンセンスな気もしています。現実を顧みない緊縮財政には反対ですが、イギリスでトラス前首相が大規模減税を掲げたためにポンドが急落した事例を見ても、財政を巡る議論はそれほど簡単ではないと感じます。
税には、国家を経営するための財源というだけでなく、国というコミュニティを皆で支えるために一人ひとりが自分にできる貢献をしていく、という側面もあるように思います。国に託された税をどのように活かしていくか、政治は重い責任を負っていることは言うまでもありません。