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2021.01.19
自民党の機関紙「自由民主」1月26日号に、私のエッセイ『明けない夜はない』を掲載いただきました。
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私はこれまでに二度、経済危機に直面した。
10年前、東日本大震災の翌朝、社内に泊まった50人分の食料を求めて銀座の街を歩き回った。コンビニはどこも品切れ、最後の望みのデパートに開店と同時に入っていくと、ずらりと並んだ販売員の方々が「いらっしゃいませ」と言いながら、香水を噴きかけた紙切れを渡してくれた。販売員の方々の泣きそうな笑顔と甘い香りに、目頭が熱くなったのを覚えている。
20年前の世界貿易センターテロ事件。あの日を境にニューヨークを訪れる観光客は全くいなくなり、街中の飲食店やブロードウェイの劇場が次々に閉鎖された。しばらくしてテレビで新しいCMが始まった。ミュージカルの出演者たちが数百人、ライオンキングもオペラ座の怪人も美女も野獣も舞台衣装のままタイムズスクエアに勢揃いして、フランク・シナトラの『ニューヨーク・ニューヨーク』を大合唱する。
明けない夜はない。いま私達が直面する危機も、いつか必ず終わりが来る。