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2025.10.22
小児医療において、子どもの発達やメンタルヘルスを診療する医師の不足が大きな問題になっています。「子どものこころ専門医の体系的な養成に向けて、国が政策面で何か支援ができないか?」というテーマについて、順天堂大学・東京医科大学・東京女子医科大学の小児科の医師の先生方と、厚生労働省とこども家庭庁の方々と意見交換の機会をいただきました。
2019年12月に成育基本法が施行され、成長過程にあるこどもと保護者、妊産婦に対して、必要な成育医療を切れ目なく包括的に提供することが求められるようになりました。医療の技術そのものは進化していますが、子どもの心身の健康には、病気の原因だけでなく、心理状態や生活環境、人間関係といった社会的な要因も複合的に捉える必要があります。
子どもを巡る医療の現場で特に問題になっているのは、①難病を抱える子どもとその家族への心理的・社会的支援体制が未整備、②5歳児健診の実施率が低く健診後の専門相談を行う体制が不十分、③親の精神疾患を踏まえた親子関係支援、親に対する行動療法的なトレーニングが必要、などの点だそうです。
順天堂大・東京医大・女子医大のチームでは、こうした課題を解決するために、3つの目標を掲げています。
① 子どものこころ専門医などの人材育成。研修パッケージを開発し、多職種・多機関を連携させるハブとなる人材を育てること。
② 経験の積み上げによるエビデンスの構築。多職種での支援の好事例集やガイドブックの作成、地域の医療・教育・行政のネットワークづくり、行動療法トレーニング実施による費用対効果データの構築など。
③ 診療報酬体系の改善。これまで診療報酬の枠外だった行動療法トレーニング等を対象化すると共に、大学病院における研究や、家族支援、多職種連携、学校・行政連携のインセンティブとなるような報酬体系の見直し。
そして、これらの基盤となるような新たな研究プロジェクトのご提案をいただきました。
物価高で医療機関の経営がどこも厳しい現実はありますが、現状の医療体制では狭間となってしまっている領域に対しても、まずは取組を始めることが急務です。
私たちが子どもだった頃に比べて、現在の子ども達は比較にならないほど多くの不安やストレスを抱えています。一人ひとりの子ども達のかけがえのない将来を守るために、実現に向けて私も力を尽くしていきたいと思います。