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2023.02.06
横浜市鶴見区にある東京ガスの横浜テクノステーションを訪問し、合成メタン製造(メタネーション)の実証実験施設を視察しました。
メタネーションとは、発電所などから回収したCO2と、再エネ発電などCO2を排出しない電力で製造された水素を合成して合成メタンをつくり、産業や家庭などへのガス供給を行うものです。
産業や家庭で利用時に排出されたCO2は、合成メタン生成の際に再び回収されるため、大気中のCO2は増加しません。
メタンは現在使われている都市ガス(天然ガスLNG)と成分がほぼ同等のため、既存のLNGタンカーやガス管、家庭用ガス給湯器など既存のインフラがそのまま使えるため、将来の都市ガスの脱炭素化に向けた非常に有望な技術として注目されています。
実証実験が進む中で、実用化に向けていくつかの課題があります。
最大の課題は、CO2排出カウントに関する国際ルールの策定です。国内で合成メタンを精製して国内で消費する場合は問題ないのですが、日本では再エネ発電の価格が高く、再エネによる水素精製に莫大なコストがかかるため、必然的に合成メタン精製の場所を海外に頼ることになります。現在、米国のテキサス州やルイジアナ州の合成メタン製造拠点との提携が進められていますが、この場合に問題となるのが米国と日本の間のCO2排出削減の国別目標の整理の仕方です。
地球温暖化に関するパリ協定では、各国が国別にCO2削減目標を定めて進捗管理が行われています。合成メタン生成のためにCO2を回収するのは米国、利用によってCO2を排出するのは日本であり、CO2削減の努力をどちらの国に計上するのか、未だ国際的なルールが存在しないのが実情です。
また、合成メタンを現行の天然ガスに置き換えるとなるとコストアップは不可避であり、価格差を誰がどのように負担するか、という深刻な問題があります。
今後、様々な研究開発や実証実験、必要な内外との業務提携に向けた投資を行っていくうえで、予見可能性の確保は不可欠です。
他方、国内に目を転じると、メタネーションは地域連携という観点で大きな可能性を秘めています。鶴見のメタネーション施設では横浜市と連携して、近隣の清掃工場から分離回収するCO2や、下水処理場から発生するバイオガスの利用が進められ、合成メタンの地産地消モデルの確立に向けた動きが進んでいます。
日本で初めて液化天然ガス(LNG)が導入されたのは半世紀前ですが、私達は今また新しい挑戦に直面しています。既存のガス・インフラを諦めることなく脱炭素を実現する取り組みは、先の見えない遠大なプロジェクトですが、多くの関係者の方々の甚大な努力の先に、必ず解決策が見えてくると信じています。