活動ブログ

コロナとの闘い 東京とニューヨーク

2020.08.13

コロンビア大学ビジネススクール・日本経済経営研究所が主催するウェブ・セミナーにオンラインで参加しました。『新型コロナとの闘いから得られた教訓、東京とニューヨーク』という題目で、おなじみ尾身茂先生と、コロンビア大学医学部の加藤友朗教授の講演を拝聴しました。メディアを介することなく専門家のお話を聞ける機会は貴重であり、内容を皆様にも共有したいと思います。

私は2000年から2年間NYで生活しましたが、テレビに映るNYのコロナの惨状は目を覆うばかりでした。しかしその後、状況は改善し、最近では人口10万人あたりの新規感染者数は3.59人まで下がり、逆に東京の方が2.30人と悪化しつつあります。米国全体では7月以降、春先よりも大幅に新規感染者数の数が増えていますが、NYでは低く抑えられています。PCR検査を大量に実施したからではなく、非常に厳しいロックダウンとステイホームを徹底したのが理由とのこと。NYは完全に経済再開した訳ではなく、国内他州からの流入制限も続いています。屋内のレストラン、バーは休業したまま、ブロードウェイも既に年内閉鎖を決めている状況です。

◆なぜ日本は死亡率が低いのか?
科学的には証明難しいが、状況証拠として3つの点が挙げられるのではないか。①日本は(国民皆保険で)医療へのフリーアクセスがある。肺炎の疑いで病院に行き、CT検査がコロナ発見のきっかけとなった事例が多かった。②米国のアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は素晴らしいが、日本では地方のCDCである保健所が活躍した。③日本人の健康意識の高さ。法的拘束力のない緊急事態宣言に皆が協力した。

◆コロナは弱毒化しているのか?
日本国内でウイルスが変容しているのは確かだが、弱毒化しているというデータは未だなく、判断はまだ早い。最近の重傷者が少ない理由は、①検査数が増えて無症状を拾う確率が高くなった、②若い人の感染が増えた、③医療側の治療に対する知識がかなり増えた、こと等が考えられる。

◆日本のPCR検査数は諸外国に比べて少ないのではないか?
日本はSARSや新型インフルの影響が少なく、検査体制ではアジア諸国に比べてハンデを負っていた。医療機関の問題、保健所の問題など様々なシステム上のボトルネックを徐々に克服し、現在では緊急事態宣言前に比べて10倍の検査数となっている。
市民の不安という観点からは日本の検査数が少ないのは確かだが、マクロの公衆衛生の観点でみると違った見方ができる。累計の検査数を死亡者数で割ると日本は米国の3倍、つまり1人の死亡者を見つけるためにやった検査数は日本はアメリカより多い。WHOは陽性率10%以下ならPCR検査数が少ないとは言えないとしているが、日本の陽性率は現在7%。
NYも当初は検査数が少なく「医療従事者は検査を受けるな」と言われていた。その後、安心を担保するという政治的な判断から検査数増加に重点が置かれた。NYでは殆どの大学病院で担当セクションがあり、もともとPCRの供給体制が充実していた。

◆PCR検査拡大で安心を担保することが、経済コスト減少につながるのではないか?
無症状で感染リスクの少ない人も含めて全て検査をするのは現在の状況では不可能。今後のPCR検査のあり方について、以下のように考えている。①症状のある人、②無症状の人のうち、(1)検査前の事前リスクが高い所にいる人、(2)無症状でリスクが低い人、③一般コミュニティで感染リスクが低い人。①と②-(1)は徹底的に検査する必要があると考えるが、現在はそれさえ十分にできていない。偽陰性(陽性であっても検査結果が陰性と出る確率が約3割)の問題もあり、検査の質の管理が不可欠。日本の場合は①と②-(1)は税金だが③は自費。官民のパートナーシップで検査体制が拡大することを期待している。
NYでも、経済コストが高い所に事前リスクがそれほど高くなくても検査を実施している訳ではない。事前リスクが低い所は陽性が出る可能性も低い。

◆日本でも「強制力のある休業指示」を可能にすべきではないか?
感染程度がある閾値を超えたら強制力を強化するという戦略パッケージを国に提示した。ステージ4に入ったら緊急事態宣言を出すべきだと考えるが、実行するかどうかは政府の判断。
大きなロックダウンでなくても有効な措置はある。感染防御に『PCRか自粛要請か?』のような二者択一ではなくて、一番感染が起こりやすい場所(感染のドライビング・フォース)だけでも強制力をもった休業要請はあり得る。その場合はかなり手厚い補償が必要。医療やドライビング・フォースへの補償にもう少しメリハリをつけるべき。