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2025.02.03

インド出張① スズキ自動車、デリー地下鉄

インド北東部のグワハティで開催される経済開発セミナーに、日本の政界関係者として登壇する機会をいただき、初めてインドを訪れました。

14億人の人口を擁するインドのGDPは毎年5〜7%で伸び続け、再来年にはドイツ、日本を抜いて世界第3位へ。いわゆるグローバル・サウスの盟主としての地位を確立しつつあります。地政学的にも、インド太平洋地域の安全保障の観点から、台頭する中国とのパワーバランスの上で日・インド関係は非常に重要です。

 

■マルチスズキ マネサール工場

 

最初に訪問したのはスズキの自動車工場。日本ではスズキ自動車は軽自動車で有名ですが、インドでは市場シェアの4割以上を占めるトップ企業です。マネサール工場は年間90万台を製造し、13時間で1台が完成するとのこと。一連の流れを間近で拝見させていただきました。品質に最も影響するプレスや溶接などには日本製の工作機械を用いていますが部品の97%はインドで内製化し、従業員も日本人は20名程度とのこと。

 

 

インドの自動車市場は大変な勢いで拡大しており「作れば売れる」状態であるのに加えて、日本とは根本的に違うと感じた点がいくつかあります。

 

①天然ガス自動車の普及拡大

世界的にはガソリン車から電気自動車への転換が議論になっていますが、インドではスズキが製造する車の3分の1、マーケットの4分の1が天然ガス車だと伺いました。天然ガスはガソリンよりも3割安くCO2排出量も15%少ない上に、将来的にバイオガスへの代替も技術的に可能だそうです。全国に天然ガス供給スタンドが5,300カ所あり,2030年までに3倍以上に増える予定とのこと。天然ガスの自給率が約5割というインドならではですが、まずは自国の資源を活用するという点ではトランプ大統領の主張と似通っており現実的とも言えます。ちなみにインドは2070年カーボンニュートラル実現を標榜しています。

 

②工場の設計段階からCO2削減と循環経済を意識

プレスの際のカット片などの端材は、日本では業者が引き取るそうですが、ここでは毎月オークションにかけているとのこと。敷地内ではバイオガスの実証実験も行われており、緑化で義務付けられた敷地内の植物や社員食堂の残飯などを材料としてメタンガスの製造に取り組んでいました(ちなみにインドでは、都市ガスに5%までバイオガスを混ぜることが義務付けとなりつつあり、2030年までに1%を目指す日本よりも進んでいます)。また、完成車の保管場所の屋根をはじめ、敷地の至るところに太陽光パネルが敷き詰められ、総面積は甲子園球場の10倍にもなるそうです。

 

 

いずれも、天然資源と人材が豊富なインドだからこそ、日本よりもGXや循環経済が進んでいる部分もあり、日本の技術力で更なる開発と普及が可能となる予感がしました。

 

 

■デリーメトロ

 

次に訪れたのは、デリー市内を走る地下鉄。総延長430km、世界有数の規模ですが、1995年の計画段階から日本はデリーメトロの整備に円借款による支援を継続的に行ってきました。日本とインドの絆の象徴として、駅の構内には記念のパネルも掲げられています。

 

 

用地取得や住民移転の手続、安心安全な土木工事、運行のオペレーションなどの日本の技術やノウハウが、テリーメトロを通じてインド国内の他のプロジェクトへと波及していきました。メトロの完成は、電車に乗るために整列する習慣など、市民の行動様式にも大きな影響を及ぼしたとのこと。日本ではすっかり定着した女性専用車両は、インドの女性の間でも好評だそうです。

 

 

こうしたインドへの経済協力で、中心的な役割を担っているのがJICAです。ネルー政権下の1958年に日本へ鉄鉱石を輸出するための積出港整備プロジェクトから始まり、累計2万人を超えるJICAの方々がインドへの経済協力に従事。インドは借款の返済にも信用が高く、今も100件近くの案件が継続しています。

今後の課題となっているのがインド北東部です。インド北東部は、北は中国に接し、南はバングラを挟んでベンガル湾に繋がる要衝です。内陸なので港へ物資を運ぶにはバングラを通過する必要があります。JICAがインド北東部で実施している円借款事業は現在約3,800億円程度、約6割が運輸交通ですが、保健や上下水道、森林等の社会セクターも支援しているそうです。