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2024.02.09
自民党の中小企業・小規模事業者政策調査会で、グリーントランスフォーメーション(GX)を担当しています。関係省庁にお集まりいただき、現状把握と今後の進め方を議論しました。
欧州をはじめ諸外国では、企業に対して取引先も含めて脱炭素を要求する動きが加速化しています。有名な例では、2020年に米国のApple社が「2030年までに取引先も含めた脱炭素を目指す」と発表し、Appleに対して部品を供給する企業が製造時に使う電力についても2030年までに再生エネルギー100%を目指すことを公表しています。
日本の中小企業でも、取引先から排出量の計測や脱炭素への協力を要求された企業の割合は、ここ2年ほどで7%から15%(約55万社程度)に倍増しているそうです。
多くの中小企業の方々が抱えている悩みは、「情報が乏しくて何をどうしていいのか分からない」、「設備投資のコスト負担が重すぎる」、という点である一方で、脱炭素のための技術シーズを持っている企業にとっては「せっかくの技術を活かす機会がない」という問題もあります。
政府では、①省エネ補助金、②建物等のゼロエミッション化、③脱炭素のための投資支援、④低炭素設備のリース信用保険、⑤ものづくり補助金・事業再構築補助金、など様々なメニューを用意し、気軽に問い合わせることができる相談窓口を増やす等に取り組んでいます。
さらに、各企業が自社のCO2排出量を把握し削減計画をつくり設備更新を行う支援や、地域ぐるみでの脱炭素モデル事業への支援、民間にある様々な脱炭素アドバイザーの資格を政府が認定し人材育成を促していく仕組みも始まっています。
金融の世界でも、脱炭素への流れが大きな影響を及ぼしつつあります。東京証券取引所のプライム市場に上場している金融機関には、脱炭素についてグローバルなルールに基づく情報開示が求められており、中堅・中小企業も含めた投融資先のCO2排出量の把握が必要となっています。脱炭素に十分な対応ができていない中小企業は、こうした金融機関から資金調達を受けられなくなる恐れがあります。
そうした中で、地方金融機関が企業の脱炭素を伴走支援する事例も増えています。最も先進的な事例の一つが、群馬銀行による自動車関連企業への支援です。自動車部品メーカー数十社にヒアリングを行い、世界的な電気自動車の普及拡大に伴って今後どの程度の影響を受けるか定量的なシナリオを作成しているとのこと。自動車業界のように今後大きな業態変革を迫られる産業については、立地地域の実情に即した細やかな支援が不可欠です。
中小企業の経営者の方々にとっては、「GX」、「脱炭素」と聞くと大きな負担に感じられるかもしれません。しかし、政府の施策をフル活用して可能な範囲でいち早く取り組んでいただくことによって、競争力が向上し収益力アップにつながっていきます。中小企業の方々が、諦めることなく時代の変化に対応していけるよう、支援策を広げていきたいと思います。